今やその名を知らない人を探すのが難しいほどのアマゾン。膨大な商品量や優れた商品の検索・評価システム、送料無料やAmazonプライムビデオの超絶お得なサービスを提供してくれるプライムサービスなど、全産業を駆逐する気なんじゃないかというほどの勢いで拡大を続けていますよね。
そんなアマゾンですが、会社自体もすごい勢いで成長を続けており、従業員数や社屋も増加し続けています。実はこの社屋群の発展が少し他のテクノロジー企業とは異なっていて、少しおもしろいのです。今回はそんなアマゾンの本社についてご紹介したいと思います。
この記事の内容
アマゾンの本社の場所は?
アマゾンの本社はアメリカはワシントン州、シアトルにあります。本社社屋は、シアトル中心市街地の北部、サウスレイクユニオンと呼ばれる地域に位置しています。
もともとは中心市街地南部の元病院だった建物を利用していましたが、2010年に上記の場所に移転しました。
特に特別なことは無いように思えるかもしれませんが、実はこれほどの規模の企業のオフィスが都心部にあるというのはアメリカでは珍しいことなのです。
主要なアメリカのテクノロジー企業のオフィス
日本とは異なり、アメリカのテクノロジー企業の本社やその社屋群は中心市街地を避けて建設されることが一般的です。以下に少し例を紹介します。
シリコンバレー
名だたるアメリカのテクノロジー企業は、その多くがシリコンバレーと呼ばれるエリアに存在しています。
シリコンバレーはサンフランシスコ一帯からサンノゼにかけてのベイエリアと呼ばれる地域を指しますが、その中でもテクノロジー企業の集積が進んでいるのはこのエリアはサンノゼから車で東に約20分、サンフランシスコから南に車で約1時間といった場所で、都心部からは少し離れています。
ちなみにベイエリアの都市圏人口は約770万人で、大阪都市圏(約1,227万人)と名古屋都市圏(約549万人)の間ぐらいの規模です。
例えばアップルの本社は、その中のクパチーノという市にあります。iPhoneやMacの設定で出てくるので見たことがある方もあるかもしれませんね。クパチーノ自体は人口約6万人の小さな市です。
GoogleやFacebook、オラクル、HP、謎の半導体企業扱いされ一時期話題となったnVidiaなどもこのあたりに点在しています。
シアトル
シリコンバレーに次いでテクノロジー産業の核となっているのがシアトルで、上記の企業の多くがシアトルにもオフィスを構えています。また、シアトルエリアを本社とするテクノロジー企業にはアマゾンやマイクロソフト、Expedia、Valve、Tableauなどがあります。ソフトバンクが買収しようとして中々うまくいっていないT-Mobileもシアトル近郊に位置しています。
どの企業もシアトルの中心市街地には位置しておらず、その近郊のベルビューやレドモンド、カークランドといった市に点在しています。
話はそれますが、カークランドシグネチャーというコストコの商品を目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。これはコストコ創業の地がカークランドであることに由来しています(コストコの現在の本社はその近くのイサクアという市に移動しています)。
ちなみにシアトル都市圏の人口は約400万人で、前述の名古屋都市圏と京都都市圏(約268万人)の間ぐらいです。
キャンパス文化
上記のように、テクノロジー企業の多くは郊外にその本社、及び社屋群があることが多いです。主要なテクノロジー企業は多数の従業員を抱えており、より良い人材を確保できるようオフィススペースのデザインや個人スペースもゆとりをもって設計されていることが多いです。
そのため、単に本社ビルが単体で存在しているのではなく、キャンパスと呼ばれる建物群を形成する傾向があり、より土地のある郊外にあることが多いのです。これは建物群が大学のキャンパスのようであることに由来しています。
以下の画像はマイクロソフト本社がある、マイクロソフトキャンパスの様子です。
薄く色のついた部分にある大きな建物のほとんどがマイクロソフトの建物です。あまりに広大なので、会議のためにビルを移動するための専用バスがひっきりなしに走っています。
シアトルを全米最大の企業城下町に押し上げたアマゾン
さて、色々と話が脇道にそれましたが、一般的なテクノロジー企業の主な拠点がどのように場所にあるのかがわかっていただけたのではないかと思います。
そこで本題のアマゾンです。冒頭で述べた通り、アマゾンの本社はシアトルの中心市街地にあるのですが、なんとアマゾンはそこにキャンパスを形成しています。
以下の薄く色のついた部分のがアマゾンが保有、もしくは借りているオフィスが点在する場所で、南側に続くビル群は中心市街地です(Google Earthのイメージが最新ではないため、ビルが存在していない箇所が存在します)。
シアトル市内にアマゾンが保有しているオフィススペースの延べ床面積は、何と約81万㎡、東京ドーム約17個分という広大なものです。広すぎてイメージがつかめない・・・。日本最大のショッピングモールであるイオンレイクタウンの延べ床面積が約39万㎡なので、そのほぼ倍と考えればイメージがつきやすいでしょうか。
この結果、アマゾンがシアトル市内で占有しているオフィス面積は、シアトル市内全体のオフィス面積の約19%を占めることなりました。これは、市街地にオフィスを構える企業としては、全オフィス面積に占める割合、総延べ床面積の双方の観点から見て全米1位となります。
これがシアトルが全米最大の企業城下町となった所以です。市街地にオフィスを構える企業の延べ床面積の観点で見た2位はCitiグループで、ニューヨーク州ニューヨーク市に本拠地を構えますが、延べ床面積としては約37万㎡でアマゾンの半分以下です。
さらなる拠点拡大を目指すアマゾン
そんなシアトルで規模を拡大しているアマゾンですが、実は第二の本社となるような拠点をつくるべく、新たな都市を北米で探しています。通称Amazon HQ2プロジェクト。
人口が100万人以上いて、優秀な人材が集まる場所を探しているようです。アマゾンは広く意見を外から募って場所を決定するようなので、どこになるのかこれから楽しみですね。
あとがき
アマゾン本社がいかに特異な発展を遂げているのかがイメージできたのではないでしょうか。都市圏人口が約400万人の都市のオフィススペースの約2割がアマゾンで占められているというのはかなり驚異的。
アマゾンとしては、アマゾンで働くことを希望する人は都市での生活を好むと考えており、その視点からも都心にオフィスの集積を進めているようです。シアトルは治安も良好なため、都市部に居住し、都市部で働くといった発展の仕方が可能なのもアマゾンにとっては運が良かったのかもしれません。
アマゾンでは福利厚生にも力を入れているようで、高い給与水準や充実した医療保険制度、有名アーティストを招待してパーティー等も開催しているようです。羨ましい限り・・・。