数分で充電完了し、航行距離も長い全個体電池EVをトヨタが発売へ

トヨタ自動車は、2022年にも全個体電池を搭載した電気自動車を発売すると発表しました。

トヨタは、全固体電池を採用したEVの開発を進めている。
これは、
・航続可能距離の延長
・充電時間の短縮
を可能にする新技術だ。
この次世代型EVは、新開発プラットフォームを採用し、2022年に導入される見込みである。
近年開発された全固体電池は、
・電解質が液体ではなく個体
・リチウムイオンバッテリーよりも充電量が大きい
という利点を持つ。

出典: AUTOCAR JAPAN
https://www.autocar.jp/news/2017/07/25/230401/

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全個体電池って?

現在プリウスなどの電気自動車が使用している電池は、液体の電解質を利用したリチウムイオン電池を使用しており、これはスマートホンやノートパソコンなど一般的な製品でも幅広く利用されているものです。リチウムイオン電池は、デジカメのバッテリーなどをみると一見ただの堅い物質ですが、実は中には液体の有機溶媒が入っています。全個体電池には液体が使用されず、すべての要素が個体のみでできているバッテリーとなります。

全個体電池の利点

リチウムイオン電池は原理的に爆発、発火の危険をはらんだバッテリーです。例えばボーイングは787型の航空機からリチウムイオン電池を使用しはじめましたが、運行当初は発火問題などが発生しており、同機の運航停止支持が出るまでの自体にもなりました(参考: Wikipedia ボーイング787のバッテリー問題)。一方、全個体電池には原理的にこのような問題はないため、より安全な技術となります。スマートホンでよく問題となっているような、長期間使用しているとバッテリーが膨張するといった問題も起こりません。

また、劣化しにくいため充電を繰り返し行った際の心配も減ります。日産ノートでもこのあたりはよく問題としてとりあげられていますね。

また、リチウムイオン電池では、電圧をかせぐために内部でいくつもの部屋をつくって、小さな電池を直列につなぐことでそれを実現しているため、必然的に大きくなってしまします。しかし全個体電池ではそのようなことを行う必要がないため、バッテリー本体の小型化が可能かつ同体積でより多くの電池を蓄えることが可能です

何故今まで使用されていなかったのか

このようにいいことづくめの個体電池ですが、今まで製品では利用されていませんでした。個体電池の出力は利用される個体の伝導率の影響を受けるのですが、今まではそのようなイオン電導性の高い電解質が見つけられていなかったためです。

トヨタ自動車は東京工業大学と行ってきた共同研究で、合成しやすく、大気下での安定性があり、かつ加工しやすいスズとケイ素からなる固体電解質を発見したことで、今回の発表となったようです。なおトヨタはこれを用いたEV自動車を2022年に発売するとしています。

自動車メーカーの焦り

テスラ自動車などの台頭に見られるように、バッテリーとモーターを利用した自動車は、今までのガソリン車に比べれば開発が容易で、メーカーの参入障壁が下がっています。

電気自動車の充電

今までガソリンエンジンを利用した自動車を主に販売してきた各自動車メーカーの強みは、内燃機関の開発で培ってきた技術の積み上げでしたが、大気汚染への懸念から各国での規制は強くなる一方で、もはや燃費や大気汚染物質排出量の改善だけでは立ち行かなくなってきました。そのため各社代替技術への移行を進めているところです。最近ではボルボが2021年までに全車をハイブリット化、2025年には全車を電気自動車化することを発表しましたね(参考: AUTOCAR JAPAN)。

テスラ自動車はバッテリーの調達はパナソニックなどの外部から行っており、自社技術を利用しているわけではありません。今回トヨタが自社で開発した技術を利用することは大きなアドバンテージとなります。より普及帯価格の電気自動車が発売されることを期待したいですね。

インフラ整備はどうなるのか

今回のトヨタの発表では、フル充電を数分で行えることが期待されているようでした。数分で充電が完了するのであれば、ガソリンを給油するのとたいして変わらないため実用的な技術となるのではないでしょうか。

電気自動車の普及のためには、電気ステーションのインフラ整備が進んでいくことが重要です。電気なので家庭で充電することが可能なことや、航行距離も伸びることが期待されていることから、現在のガソリンスタンドと同等ぐらいでの整備は不要かもしれませんが、消費者視点で安心できるレベルの普及が大事です。きっとガソリン車が普及し始める時も似たような状況だったのでしょうね。

まとめ

各国の法整備もあり、今後ハイブリッド自動車や電気自動車は一層存在感を増していくでしょう。

新規メーカーの参入障壁が下がるといっても、自動車は命を預ける乗り物ですから、安全性、信頼性に一日の長がある従来の自動車メーカーにはまだまだ大きなアドバンテージがあるはずです。個人的には従来の自動車メーカーに頑張ってほしいですが、新規メーカーが入ることで新しい風が吹くこで刺激になることは歓迎です。

電気自動車の普及率が上がった際に、そもそも電力供給量は足りるのかという問題もあります。電力供給のために火力発電のような方法で発電していては本末転倒ですし、このあたりにも改善や技術革新なのかもしれません。

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